クロード・モネを知る
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印象派とは?

19世紀後半、フランスで生まれた印象派(Impressionism)は、それまでの美術の常識をくつがえした革新的な絵画運動です。
アトリエの中で緻密に描くのではなく、画家たちは屋外へと飛び出し、自然の光・色・空気のうつろいをキャンバスに写し取りました。

彼らの目的は「見たまま」ではなく、「感じたまま」を描くこと。

この新しいスタイルの象徴となったのが、クロード・モネの《印象・日の出》(1874年)。
朝靄の中に太陽が浮かぶ光景をざっくりとしたタッチで描いた作品は、当時の批評家に「まるで未完成の“印象”にすぎない」と揶揄されました。
しかし、この皮肉交じりの言葉が逆に定着し、運動そのものの名前「印象派(Impressionism)」となったのです。

印象、日の出
印象・日の出(date.1894)

“Everyone discusses my art and pretends to understand, as if it were necessary to understand, when it is simply necessary to love.”
「みんな私の芸術について語り、理解したふりをする。まるで理解することが必要であるかのように。だが実際には、ただ愛することが必要なのだ。」

クロード・モネ

印象派の特徴と技法

印象派の絵画には、いくつかの共通した特徴があります。

光と時間の表現

朝と夕方、晴れと曇り。
同じ風景でも光の条件によって色は全く違う――。
モネは《積みわら》や《ルーアン大聖堂》のように、同じモチーフを何度も描き、時間の変化そのものを作品にしました。

積みわら
積みわら(date.1890-1891)
ルーアン大聖堂
ルーアン大聖堂(date.1892-1894)

短い筆致と鮮やかな色

混色せず、純粋な色をそのまま並べることで、遠くから見たときに目の中で色が混ざる「視覚混合」を利用。
これにより、絵具の輝きが損なわれず、生きた光が感じられる画面が生まれます。

モネの代表作である《睡蓮》シリーズでは、水面の反射光を、青・緑・紫など多様な色のタッチで構成し、光のゆらめきを視覚的に混合させています。

シダレヤナギと睡蓮の池
睡蓮(date.1915-1926)

屋外制作(En plein air)

En plein air(アン・プレネール)はフランス語で「戸外で」「野外で」という意味。

つまり――
アトリエの中ではなく、実際の自然の中でキャンバスを立てて描く
という制作方法を指します。

自然の中で直接観察しながら描くことで、空気の透明感や風の動きを表現しました。
一瞬の光の効果をとらえることを重視し、光が刻々と変化するため、モネは素早い筆致で描写しました。こうした表現が、印象派特有の“筆触”へとつながっていきます。

代表的な画家と作品

モネとともに「光の時代」を切り開いた画家たちがいました。
パリの街角、人々の笑顔、風にゆれる木々――それぞれが独自の視点で“光”と“日常”を描き出しました。

ピエール=オーギュスト・ルノワール

人物の温かみと柔らかな色彩

ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会
ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会(date.1876)

カミーユ・ピサロ

素朴な農村の光を愛した画家

春、朝、曇り、エラニー
春、朝、曇り、エラニー(date.1877)

エドガー・ドガ

洗練された構図で“動きの美”をとらえた観察者

エトワール
エトワール(date.1870)

ベルト・モリゾ

女性の繊細な感情を光と色で描いた印象派の女性画家

ゆりかご
ゆりかご(date.1872)

アルフレッド・シスレー

自然と静けさを描いた詩人のような画風

モレの橋
モレの橋(date.1999)

印象派がもたらした変化

印象派の登場は、美術界に大きな革命を起こしました。
それまで“写実”が美の基準だった時代に、彼らは「見る人の感覚」を作品の中心に置いたのです。

この考え方は後のポスト印象派(ゴッホセザンヌゴーギャンなど)へと引き継がれ、さらに現代アートや抽象画の礎となりました。

印象派は、単なるスタイルではなく、「感じる絵画」という新しい視点を世界に広めた運動だったのです。

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